【デジタル古生物学】CT画像から化石を3D復元、原始鳥類の姿解明

岩石から掘り出せない化石をコンピューター断層撮影法(CT)の画像から立体的に読み取り、3Dプリンターで復元する「デジタル古生物学」によって、原始的な鳥類の姿が詳しく分かったとする研究成果を、福井県立大恐竜学研究所(永平寺町)が発表した。


 東洋一所長は、「手法が有効であることを確認できた。県内企業と連携して教材化や産業化をすすめたい」としている。

 分析した対象は、2014年に勝山市の約1億2000万年前(白亜紀前期)の地層で発見された鳥類の全身骨格。大半が立体的に残り、世界的にも貴重な標本だったが、全身の骨の化石は細かくてもろく、岩石から削り出して標本や資料にするクリーニングをかけられなかった。また、県立恐竜博物館(勝山市)のCT設備では、岩石の細部まで見通せなかった。

 このため、強力な放射線を照射して物質の構造まで詳しく分かる大型放射光施設「SPring―8(スプリング8)」(兵庫県佐用町)に持ち込み、撮影に成功。コンピューター上で骨化石を一片ずつ取り出し、コンピューターグラフィックス(CG)で再現して3Dプリンターで骨を作り、骨格モデルを組み上げた。

 その結果、▽大きさはハトくらい▽足の甲の骨が3本に分かれる「恐竜らしさ」が残る▽しっぽの骨が恐竜より短いが、今の鳥類ほど小さく収まっていない▽モモンガなどのように滑空する程度の飛行ができる▽後ろ脚の機能性が高く、走るのは比較的得意だった――と推察できた。中国で約1億3000万年前にいたとされる原始鳥類の「孔子鳥」と似ていることが、より鮮明になったという。

 こうした成果を受け、県立大では、今年度に開設した大学院の「古生物学」のコースで研究手法の習得、向上に力を入れる。また、生きて動く姿を想像した複製品(レプリカ)を製造する技術などを県内の企業と開発し、展示や教材に生かしていくという。

 今回復元したCG映像は、県立恐竜博物館で7月13日から、肉食恐竜が鳥に進化する過程などをたどる特別展で紹介する予定。

http://sp.yomiuri.co.jp/science/20180520-OYT1T50025.html
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