【兵庫】飲酒ひき逃げ、同乗者3人も提訴 神戸の遺族

飲酒ひき逃げ、同乗者3人も提訴 神戸の遺族
2018/5/20 11:45
https://www.kobe-np.co.jp/news/sougou/201805/0011274096.shtml

 神奈川県葉山町で2015年、神戸市中央区出身の浜口望(のぞみ)さん=当時(23)=が死亡したひき逃げ事件で、同区に住む浜口さんの両親が、乗用車を運転した受刑者の男(22)らに計約1億1356万円の損害賠償を求める訴訟を神戸地裁で起こしている。「飲酒運転の危険性を認識しながら助長、援助した」として、刑事罰がなかった同乗者3人も提訴。遺族側弁護士によると、飲酒事故で同乗者の賠償責任を問う訴訟は全国的に珍しく、「飲酒運転防止に向け警鐘を鳴らす意味は大きい」とする。
 訴状などによると、受刑者の男は事件の約1時間後に神奈川県警に出頭した際、呼気から基準値を超すアルコールが検出され、「自宅に帰ってからビールを飲んだ」と供述した。同県警は酒気帯び運転容疑でも追送検したが、嫌疑不十分で不起訴処分となった。
 しかし、その後の公判で「(同乗者らと一緒だった事件前の昼に)海の家でビール1杯と酎ハイ2~3杯を飲んだ」と述べ、「家で飲んだことにしようと思い、自宅で(発泡酒)3缶をシンクに流した」と偽装工作を認めた。
 道路交通法では、飲酒運転を容認した同乗者にも懲役3年以下などの罰則を定めるが、受刑者の男の車に同乗した男性3人は逮捕されず、罰せられなかった。
 浜口さんの両親側は訴訟で、当時の目撃情報などを基に飲酒運転を立証する方針。当時19~20歳だった同乗者3人についても「飲酒で危険な状態と認識しながら運転を制止・中止しなかった」「(運転手に)救護措置を取るよう促すこともなく悪質」と主張する。
 一方、同乗者側は訴訟でこれまでに「運転を止めさせる義務はなかった」などと争う姿勢を示している。
【神奈川・葉山町ひき逃げ事件】2015年8月23日夕、神奈川県葉山町の県道で、制限速度の約2倍のスピードで走行していた乗用車が海水浴帰りの歩行者12人の列に突っ込み、女子美術大2年の浜口望さん=当時(23)=を死亡させ、20代と30代の男女2人に重傷を負わせ逃走した。横浜地裁は16年5月、自動車運転処罰法違反(危険運転致死傷)などの罪に問われた被告の男(22)に懲役11年の判決(確定)を言い渡した。判決は「飲酒運転の発覚を免れるため逃走した経緯や動機も身勝手」としたが、飲酒の関連については不起訴処分となったため直接の罪に問われなかった。